| Ｇ球場に到着したのは午前10時頃。平日の昼間だというのに、既に室内練習場前で色紙を持って選手の到着を待っているファンはそれなりの人数がいました。そのうちの一人を捕まえて、「今日は誰が来てるんでしょ？」と聞いてみると「到着を確認したのは川相、江藤、それに原コーチ」だそうな。 しばらくそこに立っていると室内練習場の駐車場に入ってくる車が１台。そこから降り立ったのは他ならぬ90年代最後の20勝投手、上原浩治でありました。しかしながら上原君はかなりピリピリした様子で、サインを求めるファンに「これから練習ですから。それとここは選手以外立入禁止ですよ」と言い、スッと室内練習場へ消えていってしまいました。そのすぐ後で後藤選手も現れたのですが返答は似たようなもので、やはり練習前はみんな緊張しているのか気軽にサインを貰えそうな雰囲気ではありませんでした。 新たに選手が現れる雰囲気でも無かったので私は土手下のグラウンドへ移動。そこでは柏田投手と川相選手がキャッチボールを、上原君と誰かがひたすらグラウンド内を走り込んでました。（もう一人が誰だったのかは確認出来ず） 小一時間ほどすると川相選手がグラウンドでの練習を切り上げて、グラウンド脇に群がるファン１人１人から頼まれるサインや写真撮影に応じてくれました。あたしも手持ちの川相カードにサインをお願いしたんですが、その時渡したペンが悪くちゃんとインクが出なかったんですね。 で、実を言うとこのペンは、おねーちゃんカードにサインを書かせたら右に出る物のいないコレクター仲間の某森氏ご推奨の極細の銀ペン（新品）でした。確かにメタリックのペンとしてはかなりの細字が書けるのでカードへのサインには向いているものの、スポーツ選手の書く流れるような線だと構造上インクが出ない事があるんですね。そして、出の悪いペンで上から何度も重ね書きされたサインはかなり悲惨な状況になってしまいました。これは川相選手本人にも申し訳なかったです。テストした時には大丈夫だと思ったのになあ・・ ちなみにその後も川相選手はファン１人１人の要求に丁寧に答えつつ室内練習場の方へ消えていきました。うーん、さすが選手会長。 |
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その後、一度我が愛車に戻ってもう１本用意していた細字の銀ペン（こちらは普通のフェルト軸）に替え、ボケーッとグラウンドを眺めていると、その後ろから一人の選手が現れ、見ると槙原投手でしたね。他のファンは気付かなかったのか無視してたのかは分からないけど、群がる程にファンが集まらなかったのであたしも落ち着いてサインをお願い出来ました。こっちのペンは完璧。結局あたしは川相選手会長を「使えないペンのテスター」に利用した形になってしまった・・ 今度改めてサイン書いて貰わなきゃ。ちなみに槙原選手は別にグラウンドに降りるでもなく、あたしを含む2-30人のファンにサインだけして去っていってしまいました。 そうこうすると何やら周囲がざわめき始め、大名行列のように取材陣を引き連れ一人の選手が室内練習場方面から登場してきました。自主トレ中の各選手はユニフォームを着ていないので遠目に見ると一体誰なのか分からなかったりするものですが、その選手が誰なのかは100メートル先からでも分かりましたね。日本球界一のスラッガー、ヒデキ松井その人でした。 実際あたしは何も知らずにＧ球場へやってきたんですが、偶然にも今日がヒデキの自主トレ始動日だったんですね。で、サインを求めるファンに「後でね」とだけ言い残しグラウンドへ入っていきました。しかし間近に見るとこの人はデカいです。 図体だけでなく存在自体がデカい！ もうあたしはその場に立ち尽くしてその姿を目で追うことしか出来ませんでした。 それからしばらく時間が流れ、また周囲がざわめき始めます。上原君が帰り支度を始めたからです。色紙やらカードやら、それぞれのファンがサインを貰う準備をしている中、上原君はその期待に反してファンのほとんどいないレフト側の出口から出ていってしまいましたね。その後は光の早さで練習場を後にして帰ってしまったそうで、周囲のファンもかなり落胆してました。 周囲のファンから「上原は冷たいねえ、でも松井さんはそこが違うよ」と言った声が聞こえてくる中、しばらくするとヒデキも帰り支度を始めたのですが、さっき上原君が出ていった出口からグラウンドを去ってしまいました。あれあれ？さっきの「後でね」は何だったの？って感じ。ただ、ヒデキは上原君みたく光の早さで帰る事は無く、車で室内練習場へ移動した模様。そしてグラウンドはスーパースター不在の状況となり、ファンは次々と室内練習場へ移動を始めました。 しばらくの間は特に動きもなく、何事も無い時間が流れたのであたしはグラウンドの周囲を散歩。そして室内練習場へ戻ると数十人のファンが関係者以外立入禁止である筈の室内練習場の駐車場でヒデキが出てくるのを待っていました。ここは朝に上原君と後藤選手から怒られた場所なので「入っちゃってもいいのかなあ・・」と思ったものの、別に雰囲気的には問題無さそうだったのであたしもそのファン達に混じってヒデキを待つ事にしました。 しかしながらさっきの上原君の様子を見ると、やはりヒデキクラスのスタープレーヤーともなればそうそうサインは貰えないんだろうな、と思いましたね。とにかく取り巻きが凄まじく、全部のファンに応じようとしたら小一時間のサイン会になってしまいますから。ここで待っていても多分ヒデキはファンに目もくれず愛車に乗って風のように去ってしまうんだろう、と思っていたところにヒデキが出てきてファンに言った言葉は 「一人１枚だけね」でした。 そして次々に渡される色紙やポートレートやポスターやカードに次々とサインし、勿論あたしの渡したカードにもサインをくれました。話には聞いていたけど、なんとファンを大事にする人だろうと思いましたね。ちなみにあたしがヒデキにサインをお願いしたカードは99カルビーの#095。昨シーズン中リリースされたヒデキのカードの中で最もお気に入りの１枚です。その場は無我夢中だったものの、サインをして貰ったカードを渡され、そこから少し離れた場所でカードを見返したら震えが来ましたね。あたしが日本球界一尊敬するプレーヤーがあたしの為に書いてくれたサインカード。もうこれは何にも代え難い宝物となりました。 |
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その後ファンのサイン責めにあい、全てを終えて愛車に乗って去っていくヒデキを遠目にぼんやりと眺め、潮が引くようにその場を後にする他のファンと共にあたしもジャイアンツ球場を後にしました。 とにかく今日は収穫という単語では言い表せない収穫がありました。憧れのＧ戦士達を間近に見られ、サインを貰った事も収穫でしたが、それより何よりヒデキが本当にファンを大事にする人だという事をこの目、この体で確認出来た事が何よりの収穫でした。今までも好きだったけど、更に惚れ込みましたね。そしてあたしは「明日もまたここに戻って来よう」と思わずにはいられないのでした。 |
