西部劇が撮りたくて
| 映画は撮りたいけど通俗的な映画は撮りたくない。その為に己のスタイルを確立させたいんだけどどうすればいいのか分からない。そんな自問自答に疲れ果てて「もうオリジナリティなんかどうでもいいや。とにかく映画作りを楽しもう。一度ゼロに立ち返って面白いことをやろう」と思って何年か前に西部劇を撮ろうとした事があります。 これはもう正にオリジナリティゼロ。基本コンセプトは「俺がイーストウッドになる」という事だったので、全てのシチュエーションがイーストウッド映画のパクリで構成された「遊び感覚」の映画です。タイトルはズバリ「夕陽の用心棒」。これだけは全体の構成が固まる前に決まってました。 西部劇となれば馬の存在を無視出来ませんが、馬なんか用意出来ないので「モンティパイソン アンド ホーリーグレイル」をパクって登場人物全員が手綱を引くフリをしながらスキップを踏んで移動。西部の町を背景に撮影なんか出来ないので舞台は全て現代という実にふざけた内容。 ただし銃撃戦だけは激マジで「徹底的にカッコよく仕上げよう」と、ガンマン３部作やペキンパーの「ワイルドバンチ」を何10回も見直してカット割りをひたすら分析。そしてシナリオを書き絵コンテを起こし、小道具も用意してガンプレイを死ぬほど練習。最終的に「駅馬車」でジョン・ウェインが見せた「ウィンチェスターを片手で回す技」もイーストウッドがガンマン３部作で幾度と無く見せた「銃を回しながらガンベルトに収める技」も完全にマスターしました。 しかしながら、この企画は様々な障害によって完全にオクラ入り。残った物は買い込んだモデルガンの山と、何の役にも立たない私の華麗なガンさばきだけ。その時は己の人脈の薄さと経済力の無さを呪いましたが今となっては後の祭りです。 それでもいつかは西部劇を撮りたいですね。デカいプロジェクトを組んで制作費に何千万もかけて、ウエスタン村を何日も借り切って馬も用意して、それでも音楽はエンニオ・モリコーネで主役は俺。狂った野望ですが、そんな企画が実現した時の事をイメージすると、私は少しだけ幸福な気分に満たされるのでした。 |