バイオハザードの悪夢

あたしがトレカ収集を始めたのは96年の春先から。それから今日までの約５年間、数え切れないほどの失敗を繰り返して参りましたが、中でもバイオハザードの悪夢ほどバカげた失敗はありませんでした。今後この様な失敗を繰り返さない為にも、また同じような被害者を増やさない為にもここであの時の悪夢を詳しく検証していこうと思います。

98年の夏、それまで勤めていた職場の部署が不景気の為に撤退され、三十路を過ぎたあたしは突然フリーカメラマン生活（プー太郎とも言う）を余儀なくされます。それでも最低限の生活費を稼げるだけの仕事は単発で請け負っていたのでさほど危機感も無く暇な時間を謳歌していました。

10月頃には時間を持て余し始め、それまでほとんど興味の無かった家庭用ゲーム機（プレイ・ステーション）を購入。と同時に購入したゲームソフトはカプコンのバイオハザードとバイオハザード２。これが見事にあたしの感性とマッチして、一時期はそれこそ寝る間も惜しんでやり込んだものです。

それから一ヶ月ほどしてアマダ印刷加工がバイオハザードのトレーディングカードをリリース。これはアメリカ市場をターゲットとしたクロミウム仕様の実に美しいカードで、インサートも封入率1:3のホロクロームが９種、1:8のモーションカードが３種だけという良心的な仕様で非常にお手軽。カードの出来の良さも手伝ってあたしもこれを買い始めたのですが、これのボックスを見ると少々気になる記述が一つ。

Special Chase Card "Jim Lee" Autograph

どうやらこのトレカ、激レアとしてジム・リーなる人の直筆サインカードが封入されてるらしい。これはパックには全く記載されておらず封入率も不明。ついでに言うとジム・リーが何者なのかも不明（笑）　その後アメコミに詳しいコレクター仲間に聞いたところ業界No.1のアメコミ作家にして「Resident Evil（バイオハザードのアメコミ）」の表紙を描いた人だということが判明。更にアマダのホームページを覗いた所、このカードの封入率が1:480である事も判明。

この時点では「へえ、そんなカードがあるんだ」程度の意識しか持たなかったものの、それからしばらくするとこのトレカには「R1」というジム・リーサインカードと全く同じ絵柄なれどサインがなされていない隠しインサートも存在することが判明（封入率は1:240）。そして、ジム・リーサインはこの「R1」という通し番の箇所に「SP1」と記載されている事も判明。

これで謎多きバイオハザードトレカの全貌が明らかになった訳ですが、当時あたしはNifのFCOLLC/MES/19（ノンスポカード会議室）の旗手を自認しており、その頃は丁度書き込みネタが無く盛り上がりに欠けてた事も手伝って、よせばいいのにあたしはここで一発奮起し、よっしゃあ！　それじゃここで俺がこいつを見事引き当ててノンスポ会議室を盛り上げてやるか!!という要らぬ誓いを立ててしまったのでした。

年明けに取り敢えず２箱買ったのか。その時はジム・リーサインこそ引けなかったもののR1を１枚GET。その後もバラで買ったり箱で買ったりしたもののSP1はおろかR1も引けない日々が続きます。

２月頃には町田にある感電’Ｓなる海外ノンスポトレカ専門店でバイオトレカが安売りされている事実を掴み、単車に乗って町田へ繰り出し店内で一気に８箱開けの１人開封大会を開催。結果はR1が１枚増えたのみ。

そして忘れもしない99年春、有明のトイ・フェス会場で某Ｉ氏との２人開封大会が開催されます。関係ないけどウチでよく使われる人間封大会という名称はこの２人開封大会を某Ｊ氏が人間封大会と読み違えた事から生まれました。

話を戻すと当時あたしと某Ｉ氏はちょっとした引き合戦を繰り広げており、あたしのジム・リーサイン狙いに対抗して某Ｉ氏はDARTなるメーカーからリリースされたタイタニックトレカ（例の映画のトレカじゃなく実際に沈没したタイタニック号の実録トレカ）に封入された生き残りのバアさん＆沈没したタイタニックを発見したジイさんの直筆サインという訳のわからん物を狙ってバカ買いを続けてました。

そして２人で示し合わせてトイ・フェス会場で勝負し、あたしが負けたらハンドル名を負け犬に変える、という賭けをした訳。

結果はカートンで開けた某Ｉ氏が見事両種のサインを引いて圧勝。あたしはと言えば前記の１人開封大会で金を注ぎ込み過ぎ、この日は２箱しか買えなくてR1すら引けず大惨敗。

そしてこの日からあたしは負け犬として屈辱の日々を送るハメに陥ったわけ。如何にノンスポ会議室を盛り上げる為とは言えここまで自虐的になる必要があるのか!?と自問自答した事もあったけど、まあ閲覧者もそれなりに楽しんでくれてたみたいだからあたしとしては満足してた。この時点までは、ね。

その数ヶ月後、遂にあたしも感電’Ｓでバイオトレカのカートンを注文。安売り価格とは言え費用は￥63000。そして、このカートン開けによって見事SP1を引き当て負け犬から勝ち馬映画バカとして返り咲き感動のフィナーレ、というのがあたしの思い描いたシナリオだった。

しかしながら幸運の女神に見放されたあたしを待っていたのはカートンで開けてもジム・リーサインが引けないという不測の事態。

まったく、あの時のあたしのマヌケ面はみんなにお見せしたかったですわ。町田駅前のパーキングに停めた愛車映ちゃん号の中でバイオトレカにまみれながら１時間くらい放心状態でしたからねえ・・　ちなみにこの時点であたしが開けたバイオトレカは通算で約700パック。散財総額は16万を超えてたか。

もう完全に買う気は失せていたものの、FCOLLCでのハンドルは負け犬のまんまだし、ジム・リーサイン引くまでハンドルは変えん！とか豪語しちゃったから引くに引けなくてその後も惰性でバイオトレカを買い続けました。

結局800パック以上買ってもジム・リーサインは引けず、散財総額も18万をオーバー。もはや精も魂も尽き果てて人知れずハンドル名を負け犬から映画バカへ戻しました。誰か突っ込んで来るかと思ってたけど、さすがにみんなも死者にムチは打てなかったみたい。

そして付いたオチはカード博士こと某ま氏が気まぐれで買った安売りのバイオの箱（￥2000也）からすんなりとSP1を引き当てて自慢話を聞かされるというこの上ない屈辱でした。あの時ほどもうトレカ収集趣味なんか止めようと思った事はありませんでしたな。

それでも相変わらず激レア狙いを止められないあたしって一体何者なんだろ？　もはやバカという単語であたしを表現する事は不可能かも知れない。今後は世界で最も愚かな人間を表現する上で映画バカ的という新語が適切かもね。
３枚のR1＆某ま氏から貰ったSP1のカレーライス（両面原寸大）

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