転倒虫のサンバ
| 無茶な乗り方さえしなければ単車ほど安全な乗り物もないんだけど、タイヤが２つしかない以上バランスを失えば転倒するという事実は揺るがない。あたしとて19年も単車に乗ってればコケた回数は相当な物になる。 単車に乗らない人って転倒をもの凄い一大事的に捉えてるけど、実際には大した問題じゃなかったりする。そりゃ、パーツが壊れたり着てる物が破れたり、露出度の高い服なんか着てれば全身擦り傷だらけになったりするから全く問題ない訳じゃないものの、それなりのスピードで走行中に転倒しても命を落とすほどの大事に至るケースなんてほとんどない。 むしろ単車乗りにとっては笑いのネタだね。そもそも単車乗りってカッコつけたがる奴が大半じゃない？ そういったある種のナルシストが無様にコケた時の言いしれぬ可笑しさ。これはもう同類として笑うしかない。 勿論、自分自身が笑いのネタになることもしばしば。そんな訳でこれまでの転倒人生の中から印象に残るエピソードを３つほどご紹介。 ★気分は正にＳ・マックィーン 高校時代、単車仲間の友人達と夜の公園で談笑してた時の話。一人のバカが原チャリで子供用のすべり台（公園によくあるコンクリート製の山みたいな奴）を駆け上ろうとしたら登り切れずにひっくり返った（そいつはこの一件で右手を骨折）。それを見てたあたしは「バカだなあ、そういう事はもっと勢いを付けてやるんだよ！」と言い放ち、思いっきり助走を付けて愛車シャカＴですべり台を駆け上ったわけ。 そしたら勢い余って空を飛んだ。多分、高さ的には数10センチ程度だったと思うけど、両輪が地に着いてない単車へ跨ってる時ほど恐ろしい事もない。バランスが全く取れないからね。そしてあたしはすべり台を飛び越えて向こう側の雑木林みたいな所へ突っ込んでった。 もう周囲の連中は無責任に腹を抱えて笑ってたけど、こっちは生きた心地がしなかったね。あの時はノーヘルだったし、打ちどころが悪けりゃ死んでた可能性もある。まったく今にして思うとゾッとするようなエピソードだな。 ★カルビーEVA３弾ラッキーを求めて これはカード収集を始めた頃の話だから結構最近。97-98年にかけて発売されたカルビー新世紀エヴァンゲリオンポテトチップスの第３弾に先着1000名限定プレゼントって企画があったの。すなわち、一口分に必要なラッキーカード10枚をいち早くGETした者のみがこのアイテムを手にすることが許される、と。 こういう早い者勝ち的な企画ほどコレクターの血は騒ぐ。あたしも相当に熱くなり、３弾が市場へ出回るのと同時にコンビニ巡りへ尽力を注いだわけ。数日かけて７−８枚のラッキーカードをGETし、あと数枚入手すれば応募出来る段階まで来た時の話。 カルビーコレクターならご存じの通り、弾数の切り替わり時期は店舗の在庫事情やら入荷の遅れやらの関係でどのコンビニを覗いても確実に３弾が入手出来るわけじゃない。未開拓のコンビニを求め、映ちゃん号No.2ことSEROW225Wに乗り近所を流してたら道路沿いの小さなコンビニに視線を奪われた。「あ！コンビニ!!」と思った次の瞬間目の前にカーブが迫ってきて、曲がりきれず縁石に接触したあたしは派手に転倒。 単車のダメージは右側のミラーとブレーキレバーが破損、あとはボディの一部が擦れた程度で済んだけど、お気に入りのジーンズは破けちゃうし両足の親指を強打し紫に変色しちゃうしもう最悪。そんな思いまでして入手したアイテムが一体何なのかと言うと・・ もう思い出したくもねえや。興味ある方はカルビーの歴史を各自で掘り下げてみてちょうだい。「カルビー エヴァンゲリオン 第３次中間報告」辺りの語句で検索かければ答えは瞬時に弾き出されてくると思うよ。 ★命より大事なコッペパン これは警備員のバイトをしてた時だから21歳頃の話。メチャメチャ腹が減っていたので仕事帰りにスーパーマーケットへ立ち寄りハーシーズの板チョコとコッペパンを購入。店先で食うのも恥ずかしいから少し離れた人気のない場所で食おうと思い、ドカジャンのポケットへチョコとパンを無造作に突っ込み愛車GSX-250E-KATANAで走り出した所、ポケットからコッペパンが顔を覗かせ風圧で飛びそうになった。 「あっ！俺のコッペパンが!!」と手で押さえた瞬間バランスを崩して転倒。結構交通量の激しい道路だった事もあり、混乱しながらも取り敢えず道路脇へ単車を寄せたんだけど、ふと正気を取り戻してポケットを探ったら何も入ってない。 おかしいな・・と思いつつ転倒ポイントへ目を移すと、そこには俺の板チョコとコッペパンが！ 板チョコの方は行き交う車にドカドカ踏まれ見るも無惨な姿に。そして、透明のビニール袋に入っていた筈のコッペパンは何故か剥き身で道路の真ん中に転がってた。拾いたくても交通量が多いから拾えない。 「ああ・・俺のコッペパンはこのまま車に踏まれてしまうのか・・」と思いながら悲しい目をしてその様子をうかがっていると、何故かどの車もパンを踏まずに走り去っていく。いや、別に避けて通る訳じゃなく、たまたま転がったポイントが良かったの。 そして、一旦車の流れが途絶えるまでコッペパンはその容姿を保っていてくれた！ 当然、拾って食った事は言うまでもない。これがあたしの転倒人生の中では文句無しにワースト１のエピソードだね。 他にも時速80kmで巡行中にウィンカー無しでいきなり車線変更してきたトラックが行く手を阻みパニックブレーキで吹き飛んだ話や、北海道ツーリング中に小樽辺りで一回転した話等々、転倒にまつわるマヌケなエピソードは枚挙にいとまがない。さすがに最近は無茶しなくなった＆単車に乗る機会も減ったから転倒なんてここ数年間やらかしてないけど。 ちなみに単車乗り同士が集まった際に一番盛り上がるのはこういった転倒とか、事故や違反に関する失敗談なんだよね。カッコつけてるんだけどカッコいい奴にはなりきれないって点でお互い相通ずる部分が多いからだろうな。 |