ガンバの冒険

俺的歴代アニメ番組No.1は文句無しに「アルプスの少女ハイジ」なんだけど、「No.2は？」と問われれば迷うことなく「ガンバの冒険」を挙げます。これは初回放映時から夢中で観てた。更に高校時代放映された再放送を観て、ガキの頃の己の感性に間違いが無かった事を確信したな。

話は街ネズミのガンバとボーボが生まれてこの方一度も見たことのない海を見るために川を下り、辿り着いた港で催されている船乗りネズミたちの宴の席へ紛れ込み飲めや歌えの大騒ぎをしていると、そこへ傷を負った一匹の島ネズミ忠太が現れる所から始まる。

忠太は「島がイタチの集団に襲われて仲間達がどんどん殺されている。みんなのために力を貸して欲しい」と船乗りネズミたちに救いの手を求める。腕っぷしに自信のある船乗りネズミたちは「なんでえ、たかがイタチじゃねえか。みんなでその島を救いにいこうぜ！」と威勢よく答えるものの、忠太の口から白イタチ「ノロイ」の名が発せられた瞬間船乗りネズミたちの顔から血の気が引き「死にに行くのはゴメンだ」と、忠太に力を貸そうとするネズミは全くいなくなっていまう。怖い物知らずのガンバ１匹を除いて。

ガンバと忠太は港町を訪ね歩き同志を募るものの集まったネズミはたったの７匹。そしてガンバと７匹の仲間たちは大型貨物船に潜り込み、恐怖のノロイ島を目指し長い航海の旅に出る、という内容。

このアニメ最大の魅力はデフォルメの一語に尽きますな。主役であるネズミたちの目線から捉えられた世界観はそりゃあもう凄まじいもので、犬や猫もまるで化け物のように描かれる。人間は全てグレートーン・・というか全くの灰色で、単に動きの遅い巨像のような形でしか登場しない。

そして問題の白イタチ「ノロイ」だけど、なんて言うかもう悪魔ね。正にこの世の生き物とは思えない様相を呈している。ちなみにあたしって初めてガンバを観た頃にはイタチがどういう動物なのか知らなくて、そら恐ろしい生き物もいたもんだと思ってた。で、生まれて初めて本物のイタチを見た時には目が点になった。イタチってこんなに可愛いの？？？みたいな。

とにかくガンバにおけるデフォルメの素晴らしさはアートの領域だと思う。そもそもアニメってのは動く絵なんだから表現手段の面では何でもありなんですよ。それこそ人間が人間の形をしている必要さえないと思う。まあ、この辺は作品の質によりけりだから写実的な絵の方がふさわしい場合も多々あるとは思うけど、この日本アニメ史上他に類を見ないイマジネーション溢れるガンバの世界観は賞賛に値すると思う。

内容について書けばハードボイルドの一語。ネズミたちを主役とした子供向けアニメというオブラートに包まれてはいるものの、そもそもが殺戮者との戦いを描いた物語なので実に血生臭いシナリオが展開される。特にノロイ島のエピソードでは毎回当たり前のように多数のネズミたちが殺されていく。このクールでヘビーな内容にも子供ながら陶酔させられた覚えがある。

キャラクターも実に魅力的だったな。そして非常に分かり易い。複数のキャラクターが力を合わせて戦う物語の黄金パターンはこの作品によって確立されたといっていい。怖い物知らずで勇敢なガンバを筆頭に、腕っぷしなら誰にも負けないヨイショ、頭脳明晰なガクシャ、キザなサイコロ師イカサマ、臆病者で食いしん坊のボーボ、年の功で仲間達をなだめる医者くずれのシジン、そして救いの手を求めてきたか弱き島ネズミ忠太。

エイリアン２のレビューでも書いたけど、これはもう正に世界の縮図なのね。様々な個性がぶつかり合い、時に仲間割れも起きるけれど、その７匹が力を合わせる事によって様々な難題を解決していく。そもそもが児童向け小説を原作としたアニメなのでこういったキャラクター構成は図式的とも言えなくはないけど、あたし自身はそれを踏まえても魅力的だと思った。

余談だけど原作は「冒険者たち　ガンバと15匹の仲間」といい、本来ノロイ島へ向かうネズミの数は15匹だったのね。ただ、やはりテレビ用のアニメとして15匹ってのは多過ぎるから７匹に凝縮したんだろうな（ちなみにイカサマの持つ足が速いという設定は原作に登場する「イダテン」というキャラクターの性格を継承してる）。

トータル的な構成の話を書くと、物語のヤマ場であるノロイとの戦いは全26話中後半の７話ほどで、それまでは７匹の長旅の模様がロードムービー的に描かれる。時には数話に及ぶサブストーリーが展開される場合（前半のヤマ場である黒ギツネ「ザクリ」との闘い等）もあるものの大半が１話完結、旅の過程で様々なキャラクターたちとの出会いと別れが描かれるんだけど、これがまた良かった。

一番印象に残ったのは仲間達とはぐれたガンバが傷を負い疲れ果てて辿り着いた山小屋で、一人寂しく山のガイドをしている孤独な人間の青年と出会うエピソード。ガンバが好きな人ならこれ読んだだけで「おお！　あの話か!!」って思うでしょ？　あのエピソードにはあたしもマジで感動したな。もう、話を思い起こしただけで目がウルウルしちゃう。

動物たちを主役としたアニメは今までにも数多く作られたけど、あたしにとってはこの「ガンバの冒険」こそがその中でも文句無しに頂点・・って言うかこれに勝るアニメドラマ自体、あたしの中じゃ「アルプスの少女ハイジ」しか思い浮かばない。いや、どっちも死ぬほど好きだから敢えて順位を決める必要も無いんだよな。本作を観たこと無い人がいればもう必見！　絶対に後悔する事はないでしょう。

ただ、こいつを観始めると止められない止まらない状態になっちゃって全26話を一気に観るハメに陥るので、忙しい人へはあんまりお薦め出来ないんだけどね。

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